海の京都のインバウンド~ウィズコロナにおける展望~

DMOコラム

海の京都のインバウンド~ウィズコロナにおける展望~

新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴う国際渡航制限により、訪日外国人旅行客はほぼ「ゼロ」の状況となり、日本のインバウンドは壊滅的状況に陥っています。
各国ではワクチンの開発を急ぐとともに、国を挙げてさまざまな感染症対策を講じ感染症拡大の収束に取り組んでいるところですが、依然インバウンド回復への見通しは不透明な状況が続いています。
そんな状況の中、世界の旅行者の日本観光への意識、また来るべきインバウンド回復期に向け何をすべきなのかなどについて、楽天株式会社インバウンド向けOTAサービス「Voyagin」コンテンツプロデューサーであるアレクサンダー・スタンコフ氏と海の京都DMO海外プロモーションマネージャーのジェシー・エフロンがインタビュー形式で対談しました。
この対談は、ラジオ局「αステーション」の特別プログラムとして企画し、ナビゲーターを人気DJ寺田有美子さんに務めていただきました。
※11月26日に放送された内容を一部編集しています。

<プロフィール>

アレクサンダー・スタンコフ
ブルガリア出身。在日10年以上。
2014年、体験商品予約サイトを運営する株式会社「Voyagin」に入社。日本全国を巡り、インバウンド向け体験商品の造成に携わる。海の京都には平成29年から関わる。現在、楽天株式会社インバウンド向けOTAサービス「Voyagin」コンテンツプロデューサー。通訳案内士。インバウンド実務主任者。

ジェシー・エフロン
米国出身。来日6年目。
京丹後市内の中学校でALT(外国語指導助手)として4年間勤めた後、2019年に海の京都DMO入社。海外プロモーションマネージャーとして、海外での旅行博や商談会でのプロモーション活動、海外エージェント対応、インバウンド向け旅行商品の造成、外国語ホームページやパンフレット等の作成などに携わっている。

インバウンドの現状

寺田
今回お二人には、インバウンドの現状と見通し、また今後を見据えて今やるべきことなどについてお聞きしていきたいと思います。
まず最初に、新型コロナウイルスの拡大によって日本のインバウンドは大きな影響を受けていますが、お二人が携わっておられるお仕事をとりまく状況はいかがでしょうか。

アレクサンダー
これまで日本各地の自治体などと一緒にインバウンド向けプロモーション活動や新しい体験商品を企画、インバウンドに携わる人のモチベーションを向上させるセミナーやワークショップの開催などに取り組んできましたが、コロナ禍の現在もその仕事内容は変わっていません。ただ体験商品の販売については現在海外渡航制限があるため、日本在住の外国人を対象にしています。日本在住の外国人は約200万人。多くの在日外国人が改めて日本各地を観光するようになりその魅力を再発見しています。

ジェシー
昨年海の京都DMOでは、アジアやヨーロッパなどで開催される旅行博や商談会で海の京都を直接PRするプロモーション活動に何度も参加したり、旅行商品造成や視察に訪れた30以上の海外の旅行会社に海の京都エリアを案内したりして大変忙しくしていましたが、今年度はそのような業務が全くできません。
ですので、これまでつながりのある海外旅行会社とメールなどオンラインで積極的に情報交換をしています。オンラインでの商談会もいくつか行いましたし、日本国内に事務所を構える海外の旅行会社やメディアへの情報提供やガイドをしたり、外国語ホームページを充実させたりしてコロナ収束を見据えてさまざまな業務に取り組んでいます。

寺田
仕事の内容や進め方にも大きな影響があったようですね。

ジェシー
確かに業務を進める上で影響はありますが、デメリットばかりではありません。例えば商談会などは、会場での開催だと1社につき数分というようなこともあり、十分にPRできないこともありますが、オンライン商談会だと、数十分、話が盛り上がればさらに長く商談することができます。より深いコネクションを作ることができています。

インバウンドの今後の見通し

寺田
国内旅行に目を移すとGOTOトラベルなど国内観光需要を喚起する動きがあり、地元の良さを改めて見直そうという機運も高まっていますね。海の京都においても国内観光客が増えているとお聞きしていますがインバウンドにおいてはコロナによって今後どのようになっていくとお考えですか。

アレクサンダー
日本だけでなく世界のトレンドとして、自然体験のニーズが増えると思います。国内旅行でも地方での体験型観光の入り込みが増えるなどすでにデータも出ています。インバウンドでも観光客が集中している観光地よりも国立公園などでの自然体験や地方ならではの体験メニューがより注目されると感じています。海の京都エリアを求めるインバウンドがさらに増えるのではないでしょうか。

ジェシー
海の京都エリアには、カヤック体験、e-Bike、ハイキングなどのアウトドア系体験メニューが豊富です。さらにちりめん着物などの文化系、味噌つくり体験などのウェルネス系など魅力的な体験メニューがたくさんあり、アピールポイントになると感じています。

寺田
私は先日、京丹後でe-Bikeに乗って自然に触れる機会があったのですが、こんなに癒されるんだと改めて感じました。

アレクサンダー
私も乗りました。すごい開放感がありました。まさにこういった自然を感じられる体験の需要が増えると思います。

ジェシー
あと、ウィズコロナ社会においては「安心・安全」がまず求められると思います。旅行先に求めることとして感染症対策を挙げる旅行者が多いという調査結果があります。感染症対策にしっかり取り組んでいることを発信することが非常に重要になってくると思います。

「Voyagin」、「海の京都」の取り組み

寺田
「Voyagin」では地元に密着した、地元ならではの体験プログラムがありますね。

アレクサンダー
地元ならではの特徴を生かしたなるべくユニークな体験メニューの造成を心がけています。海の京都エリアではこの3年間で約10の新しい体験商品を作りました。今後も海の京都ならではの食や文化、自然などを活用した外国人旅行者のニーズに応えられる魅力ある体験商品を作っていきたい。私のミッションだと思っています。
例えばオーガニック農園とかちりめん街道の機屋さんのような一般のお客さんには入りにくいようなところもこれから発信していきたいことの一つです。

寺田
ジェシーさんは今回新しいプロジェクトに取り組んでおられるとお聞きしました。

ジェシー
現在、コロナウイルス感染症拡大の影響で国際旅行ができません。
私は普段から海外の旅行会社などと連絡を取り合って、コロナ収束後に海の京都に送客してもらえるよう営業活動をしていますが、より海の京都をアピールしたいと思い、「オンラインバーチャル体験」の開発に取り組んでいます。これは、海の京都の魅力的な体験メニューを映像にして、海外の旅行会社にオンラインで紹介するというものです。現在、和食の料理教室や座禅体験などの企画を進めていて、講師の方と相談を重ねているところです。ただ動画を流すのではなく生放送にすることで、その場で質問にも答えられることにこだわっています。
このオンラインプロモーションでより海の京都に興味を持ってもらえると期待しています。

寺田
オンラインで海の京都のことを知ることができるのはうれしいですね。オンライン体験すると実際にしたくなりますし、日本に行ったらぜひ体験したい、海の京都に行きたいと思う方が増えそうですね。

ジェシー
バーチャル体験のようなコロナ禍の中でもできることに取り組んでいって、海の京都に多くの外国人旅行者が戻ってきてくれることを期待しています。

メッセージ 海の京都のインバウンド

寺田
コロナ禍からの回復そして、インバウンドの今後を見据えて今できること、そして、やるべきことについてお聞かせいただきたいと思います。

アレクサンダー
2つメッセージをお伝えしたいと思います。
1つ目は、インバウンドは必ず回復するということです。世界中の人にとって旅は楽しいことです。旅行したいという気持ちは消えることはありません。ある調査ではコロナの後に1番行きたい国の1位は日本でした。コロナによる入国規制さえ緩和されればインバウンドは戻ると確信しています。それを見据えて、前向きにいろいろな準備をすることが大事だと思っています。
2つ目は、コロナを恐れすぎず、今まで通りの素晴らしいおもてなしの心でインバウンドを迎えてほしいということです。ガイドラインを守り安全性を確保していることがこれからの主流になるのではないかと思っています。
今は一時的にインバウンドがありませんが、コロナ収束後は間違いなくインバウンドは戻ってきます。ですから体験コンテンツを提供している事業者の方々には、コロナ対策を講じながら事業を継続していてほしいと願っています。そして私たちは旅行者に安全かつ楽しいかつ付加価値があるような体験を提供し続けたいと思っています。

ジェシー
今後ますますウェブでのマーケティングが重要になってくると感じています。
今年、海の京都では「海の京都Times」という記事ページを新たに始めました。地元のライターが海の京都の観光コンテンツを深く掘り下げたとても興味深い記事になっています。私はこれを英訳して発信しています。このほかにもインスタグラムやグーグル地図を使って海の京都の情報を発信して少しでも多くの外国人が海の京都に興味を持ってくれることを期待しています。
訪日外国人旅行客がいつ戻るのか不安はありますが、今は準備期間と前向きに考えて、海の京都の新しいコンテンツを企画したりセールス資料やPR用のチラシを制作したりして、コロナ収束時を見据えて今できることを準備しています。

海の京都は「和の源流」をテーマにしています。このエリアには深い歴史と文化があり、現在に受け継がれています。豊かな食もあります。ウィズコロナの時代だからこそ、密を避けてゆっくり過ごすことのできる海の京都の旅「スローツーリズム」を楽しんでもらいたいと思っています。

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