ピンチをチャンスに

DMOコラム

ピンチをチャンスに

一般社団法人京都府北部地域連携都市圏振興社(海の京都DMO) 社長 森屋 松吉

あけましておめでとうございます。
昨年は世界が新型コロナウイルスに翻弄された一年でした。現在も感染は拡大しており、年末年始は外出を控えておられた方が多かったのではないでしょうか。

海の京都DMOは、京都府北部の5市2町(福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町)をエリアに広域観光地域づくりを推進することを目的として2016年6月に設立され、今年で5年目に入ります。

私は10年前にこの地域に来たのですが、最初に感じましたのは、人はいいし、観光資源がいっぱいある地域だということでした。昨年6月にDMOの社長に就任して半年が経過しましたが、さらにその思いを強くしていますし、それらの資源を有効活用して地域を活性化したい、元気にしたいと常々思っています。

今年度、海の京都DMOの事業も新型コロナウイルスの拡大により大きく影響を受けました。DMO事業の大きな柱であるインバウンドなどは皆無になり、当初予定していた事業計画の多くは変更を余儀なくされました。

そのようなコロナ禍の中でしたが、夏ごろから入り込みが戻り始め、あるデータでは宿泊予約数が昨年比2倍となるなど多くの観光客に海の京都エリアを訪れていただきました。これは国のGOTOトラベルや京都府や各市町が独自に実施した観光誘客施策による効果があったことはもちろんですが、海の京都エリアが誇る豊かな自然や山海のグルメですとかアクティビティ、宿泊施設が広々としたエリアに点在していることで、密を避けたスローな旅ができるという点で多くの人がこの地域を安心・安全な地域だと見てくれた証拠だと確信しています。

海の京都DMOでは今年度、いろいろな事業に取り組んでいますが、まず第一にコロナ対策に取り組みました。宿泊、飲食、体験事業者の皆さんが安心・安全な状態で観光客を迎える指針となる感染症対策ガイドラインを策定しました。加えて、お越しになられたお客様にも感染症対策に協力を求めるポスターやピクトグラムを作成して事業者に配布し利用していただいています。

インバウンド事業では、海外渡航が困難なため、オンラインを活用した事業にも取り組みました。台湾やオーストラリアの海外旅行会社とのオンライン商談会や、座禅や料理などをオンラインで体験してもらう「バーチャル体験ツアー」などを実施し、来るべきインバウンド再開に備えています。

バーチャル料理教室体験「Pillars of Japanese Cooking」

また、国内でも長距離を移動する旅行が敬遠される中、比較的近いエリアを観光するマイクロツーリズムを推進することとしツアーを企画しています。「地元再発見のたび」と題して、主に府内や地元の方々向けに、京都丹後鉄道の観光列車「くろまつ号」に乗っておいしいイタリアンを食べるとか、酒蔵や丹後ちりめんの機織り工場を見学するとか、地元であっても特別な旅を楽しんでもらえるツアーにする予定です。

私は、この地域に住む人が地元の魅力をしっかり知ることがとても大事だと思っています。意外と地元の人が地元のことをよく知らず、これまでもこんなに素晴らしいところをどうして自信を持って発信しないのかと思うことが何度もありました。
ですから地元の人にまず地元のことを知っていただく、そして一人一人が観光大使になったつもりで魅力を一つでも多く発信していくことができたら一層素晴らしい観光地域になると思います。

今、コロナ禍で思うように旅ができない分、「旅をしたい」という欲求を持つ人は間違いなく多いことでしょう。コロナ収束後にはそういった方の旅行先として海の京都を選んでいただきたいと思っています。この一年の状況を見ていますと、これからの観光は、宿泊や飲食施設が安心・安全であるという事が大前提です。観光事業者の皆さんには引き続き感染防止の徹底を行ってお客様をお迎えしていただきたいと思っていますし、DMOではそのような状況を維持できるようこれからもできる限りの支援をしていきたいと考えています。

また、これからの観光地域づくりは観光客を増やすだけではダメで、地域の多様な資源を生かしてすべての産業など地域全体を活性化するというような観光を進めていきたいと思っています。DMOで取り組んでいる周遊型観光に加え、移住・定住につながる滞在交流型の観光を推進していきたいと思っています。私は一次産業、二次産業、三次産業、それから、文化、教育、日々の暮らしを支えるような観光をイメージしています。今までやってきた施策、そして、新たな施策を進めていくことで地域が必ず活性化すると思っています。

今年度新たに始めた取り組みの一つに「海の京都Times」があります。地元のライター数名が、海の京都エリアの観光コンテンツなどについて取材した深掘りの記事をホームページで発信するコーナーです。非常に好評で、多くの方にアクセスしていただいており、私も毎回楽しみにしています。観光だけではなく「海に生きる」「山に生きる」「まちと文化」など歴史や文化、くらしなどもテーマにしているところに興味を持っていただいています。外国の方にも海の京都を知ってもらえるよう英語に翻訳しています。海の京都の魅力を感じた外国人旅行者がコロナ収束後に海の京都を訪れていただけることを願っています。

将来にわたり継続して海の京都DMOを運営できるよう、昨年は「中期経営戦略計画」を策定しましたし、観光庁が選定する「重点支援DMO」にも選ばれました。国等からの支援を受けつつ、京都府と海の京都エリアの5市2町それから観光協会などとの連携を一層強固にし、観光による地域のブランド化と、「地域が稼ぐ」仕組みづくりに取り組むとともに海の京都DMOに求められる役割を果たしていきたいと思っています。

これからの観光を考える時、まずはコロナが収束し一日も早く元の生活にもどることを望んでいますが、一方では新しい生活様式と言われるようにコロナによる制約のある中であってもコロナ収束後につながるような新しい事業を探していきたいとも思っています。「ピンチをチャンスに」こういう時だからこそ新しい発想が生まれ取り組みができるのではないでしょうか。
私の好きな言葉は「やればできる」です。私の信念でもあります。困難な時こそ一歩前に進むことが大事です。コロナで大変な状況ですが、希望を持って一歩二歩と踏み出していきましょう。

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