福知山市の夏の風物詩として長年、多くの人々に親しまれてきた花火大会。2013年8月の露店爆発事故以降、大規模な花火大会が開かれることはなかった福知山で2024年、11年ぶりに「福知山HANABI」と銘打った花火大会が開催された。事故の悲しみが癒えることはないものの、「まちを活気づけたい」と願う人々の力で復活。2年目となった今年は4000発が打ち上げられ、多くの市民や帰省客らが夜空を美しく彩る花火に魅了された。
花火大会で福知山に活気を
まちと文化
露店爆発事故から11年ぶりに復活
音無瀬橋付近の由良川河川敷で開催されていた「ドッコイセ福知山花火大会」は2013年で72回目を数えた伝統ある花火大会として知られたが、同年8月の花火大会会場で発生した露店爆発事故で50人以上の死傷者を出し、その後は開催されていなかった。
しかし、まちを活気づけるために伝統ある花火を復活させようと、地元の若手経営者らでつくる一般社団法人DOKKOISEや福知山観光協会、福知山駅正面通商店街振興組合、福知山新町商店街事業共同組合、福知山広小路商店街振興組合が実行委員会を組織。2024年8月11日に11年ぶりとなる「福知山HANABI」を開催した。
実行委員長として花火大会をけん引
その中心人物として花火大会をけん引したのが、実行委員長を務める奥田友昭さん。子どもの頃から花火大会に親しんだ市民の一人で、「毎年、お盆にあった花火大会は帰省した友人と出会う場所だったし、実家に兄弟が帰省するきっかけとなっていた大切なイベントでした」と昔を懐かしむ。しかし2013年、子どもと一緒に花火を見に行こうとした矢先、事故で花火大会が中止になったことを知ったという奥田さん。「自宅に帰ってテレビをつけると、事故が大きく報道されていて驚いた」と当時を振り返る。その年以降、福知山で花火大会が開かれることはなくなった。
2016年、奥田さんは福知山商工会議所青年部ドッコイセ委員会の委員長として、戦国武将の明智光秀にゆかりのある「福知山踊り」を地元の子どもたちが披露するお盆の「ドッコイセこども大会」を主催。花火とは別の催しで福知山を盛り上げようと参加する子どもの数を増やし、人気ヒップホップグループ「ET―KING」のライブイベントを同時開催したほか、2019年から3年間は夜空にスカイランタンを浮かべるイベントも開いた。
市民アンケートで再開望む声
こうしたイベントを実行しながらも、奥田さんは花火大会の復活を願っていたが、なかなか実現することはなく、2021年8月に有志でシークレット花火を開催して800発を打ち上げた。その後、花火の是非を問う市民アンケートを実施したところ、花火大会の再開に99.8%が「賛成」と回答。「400年の歴史があるとも言われる福知山の花火が戦争や水害などで中止と再開を繰り返し、主催団体も変えながら続いてきたのは、市民の花火に対する思い入れがあったからでは」と考える奥田さんは2024年、地元の団体と実行委員会を立ち上げ、福知山市の後援名義の使用許可を得て事故から11年ぶりとなる花火大会の再開にこぎつけた。
安全対策を徹底
開催にあたり、最優先したのは安全対策で、雑踏事故を避けるため打ち上げ会場近くの由良川左岸に有料観覧席を設置し、関係者や観覧チケット購入者以外の立ち入りを制限。また、打ち上げ会場近くにある御霊公園には身元が分かる地元の15店舗のみを集めた物販ブースを設置し、炭火かIH以外の火気の使用を禁止するなど安全性を高めた。
福知山の夏が戻った
こうして迎えた2024年8月11日の花火大会当日。打ち上げ会場周辺には明るいうちから多くの見物客が訪れ、露店で飲食を楽しみながら日が暮れるのを待ったほか、由良川の堤防近くに設置された爆発事故の伝承碑に献花をし、手を合わせて犠牲者を悼む人の姿も見られた。そして午後8時、暗くなった夜空に2000発の花火が打ち上げられると観客から「きれい」などと歓声が上がり、家族で見物に訪れた福知山出身の男性は「久しぶりの福知山の夏が戻ってきた。とても感動した」と笑顔を見せた。この日は約1万2000人が訪れたといい、奥田さんは「『久しぶり』などと会話をされている観客の姿を見て、やって良かったと思いました」と振り返る。
2年目は規模を拡大
2年目となった今年は規模を拡大し、打ち上げ発数を前年の2倍となる4000発に増やしたほか、御霊公園や城下通りには地元事業者による屋台35店舗が出店。有料観覧席は前年の2350席から5500席に増やした。更には「海の京都コイン」を一部の露店で使えるようにしたり、大阪の旅行会社と連携して大阪発の花火見学ツアーを実施するなど、新しい試みにも挑戦したという。
一方で出店者に火気の取り扱いを説明する安全講習会への参加を義務付け、混雑を防ぐため歩行者天国のエリアを拡大するなど安全対策も更に徹底。多くのボランティアや警備員、警察、消防の協力を得て安全な花火大会を実現させた。
事故忘れず、安全な花火大会に
来年は8000発~2万発の打ち上げを目標に掲げ「演出にもこだわりたいし、もっと上流側からも見えるように打ち上げ場所も見直したい」と語る奥田さん。今年までは福知山市に後援という形で関わってもらったが、来年は共催という形で関わってもらい、「まちを挙げて開催する花火大会」にしたいという。
花火大会の開催にあたり、奥田さんは事故の被害者と直接出会ったが、「『今も心の傷が残っており、すぐに見に行くことはできないが、いつか見に行きたい』と応援して下さる方が多かった」と振り返る。また、「事故に遭った時、福知山の人によくしてもらったから」と、花火大会にボランティアとして参加してくれた被害者もいたという。
来年で実行委員長を退き、若い世代にバトンタッチするという奥田さんは、「被害者への思いは絶対に忘れず、安全に開催することをこれからも徹底しつつ、花火大会を福知山の文化として残していきたい」と願っている。

