京都府北部の歴史文化を伝える「京都府立丹後郷土資料館」(宮津市国分)=現在休館中=がリニューアルする。2027年の再オープンを目指し、現地では新たな施設の建設と改修工事が進んでいる。展示機能を強化するほか、天橋立を望むロケーションを生かしたホール、ミュージアムショップなどを備えた地下1階、地上3階建ての新館を建設する。地域内外の人々の交流が活性化し新しい文化が創造される〝開かれたミュージアム〟を目指す。
〝開かれたミュージアム〟へ 「丹後郷土資料館」が27年リニューアル
まちと文化
ホールなど備えた新館
丹後郷土資料館は、日本三景天橋立を端から端まで見渡せる絶景「天平観」の地に建つ。京都府北部の歴史や考古、民俗分野における調査研究と収集保存、展示普及を担う施設として1970(昭和45)年10月に開館した。
地元の強い要望と協力があって設置された経緯があり、地域の歴史文化の研究に取り組む郷土史家らの思いが形になった。当時、府内には国立の博物館はあったが、府立の資料館はなかったという。
天橋立の絶景「天平観」の地に建つ
館の前には奈良時代に建立された丹後国分寺跡(国史跡)が広がり、ここには「画聖」と称された水墨画家、雪舟の「天橋立図」(国宝)に描かれた金堂と塔の基壇・礎石が残っている。
また、敷地内には1840(天保11)年に建てられた宮津藩大庄屋の「旧永島家住宅」(府指定文化財)の母屋を移築しており、高度成長期以前の地域の暮らしを伝える生活道具なども多数展示している。
〝丹後地域の宝〟 約11万点の資料を収蔵
50年以上にわたって収集された資料は約11万点にも及ぶ。
代表的な収蔵資料としては、国宝の「海部氏系図」や国内最古の紀年銘鏡である青龍三年銘(西暦235年)のある方格規矩四神鏡(国の重要文化財)、京丹後市内の弥生時代の墳墓から出土した副葬品のガラス玉など。ガラス玉は日本海を連想させる美しい青色が特徴だ。
また、「古くから受け継がれてきた藤織り」や丹後ちりめんなど、丹後の紡績に関する資料(国の重要有形民俗文化財)のほか、海に面する地域ならではの海業や交易に関する資料(捕鯨、鰤漁などの漁労具、和船)も所蔵している。
いわば〝丹後地方の宝〟を後世に残し、伝えるのが丹後郷土資料館。しかし建物の老朽化が進み、半世紀の時を経てリニューアルされることになった。より多くの人に来てもらうため、日本三景を望む立地を最大限に生かした新館を建設する。
大型の展望ホール、ミュージアムショップも
新館は地下1階、地上3階建て(延べ床面積約1900㎡)。正面は全面ガラス張りで、地下には選りすぐりのグッズをそろえたミュージアムショップと多目的室などを整える。
新館1階と本館は展示エリアで、企画展や特別展を通して丹後の歴史や文化を観賞、体験できる空間を目指す。
新館2階は約200人が収容できる大型の展望ホールを整備。最上階の3階にはカフェスペースとテラスを整え、景色を見ながらくつろげる場所にする。ホールでは、大規模な会議やシンポジウム、講演会、パーティーなどの利用を想定している。
市民が様々な活用方法を提案
市民や観光客にも開かれたミュージアムを目指す府は2025年11月、地域住民に様々な活用方法を聴く「文化観光サロン」を宮津市内で開いた。
参加した市民らは、周囲の自然を生かした音楽フェスや星空観察会、観葉植物の展示会などのほか、ピラティス、ヨガなどのカルチャー教室、出前講座の実施、生涯学習の発表など、新しい文化の醸成と発信につながるような多彩なアイデアを提案していた。
これまで、丹後郷土資料館では企画展やワークショップにとどまらず、地元小学生が作った灯籠によるライトアップ、旧永島家住宅での郷土料理丹後ばらずし体験イベント、国分寺跡の上空から天橋立を眺める熱気球体験など様々な文化観光イベントが催され、にぎわい創出に向けた可能性を模索してきた。
「新しい層を引き込み、多くの人に」
「新館でまず、歴史のある天橋立や国分寺跡の風景を五感で感じてもらいたい。それが丹後の歴史文化に興味を持つきっかけになり、収蔵品にも関心を寄せる人を増やしていければ」と話すのは丹後郷土資料館の館長を務める岸岡貴英さん。
「これまで地域の歴史や文化に興味を示さなかった若者や旅行者ら新しい層を引き込み、幅広く、多くの人が訪れるミュージアムを目指したい」と意欲を示している。

