人と動物が近い動物園

まちと文化

人と動物が近い動物園

 愛くるしく、人を癒やしてくれる動物。そんなたくさんの動物と、とても近い距離で触れ合い、エサやりもできる小さな動物園が京都府福知山市にある。緑いっぱいの三段池公園内にある「福知山市動物園」(福知山市猪崎)。身近に動物が感じられるアットホームな雰囲気が魅力で、多くの家族連れやカップルが訪れている。

山陰で唯一の動物園

山陰で唯一の動物園

 福知山市動物園は近畿北部、山陰でも唯一の動物園。ウサギやリスなど、子どもたちに人気の小動物のほか、愛嬌いっぱいのレッサーパンダやシロテテナガザルなどの希少動物もいる。園の近くにはニホンザルが住むサル舎「猿ケ島」(無料)もあり、見どころはたくさん。動物園では珍しく、ほとんどの動物にエサやりができるのが特長だ。

動物との触れ合いで癒やし

動物との触れ合いで癒やし

 人と動物との距離が近いと好評で、京阪神など遠方からのリピーターも多い。園長の二本松俊邦さんは「都会に住んでいる人はペットを飼えない人が多い。動物との触れ合いで得られる癒やしを求めて来る方がたくさんいらっしゃいます」と目を細める。

ルーツは御霊公園にあったサル舎

ルーツは御霊公園にあったサル舎
サル舎などがあった御霊公園

 そんな福知山市動物園のルーツをたどってみると、およそ70年前にさかのぼる。1951(昭和26)年、当時の福知山信用金庫が3匹のタイワンザルを福知山市に寄贈し、市は御霊公園(福知山市中ノ)内にサル舎を建てた。

 街のど真ん中に暮らすサルは一躍市民の人気者となり、公園のそばにあった図書館の職員が世話をした。しかし、サルに手を焼いていた職員は、公園の近くで時計と小鳥の販売店を営んでいた二本松園長の父、幸男さんに世話を頼んだという。

多くの人に動物を 1978年に開園

多くの人に動物を 1978年に開園
1978年開園当初の動物園(写真上)とサル舎(同下)=福知山市提供

 動物が好きだった幸男さんが世話をするようになると、池でハクチョウが飼われるようになり、小鳥舎も建てられ、サル舎は小動物園のようになった。当時、動物を展示する施設は少なく、「もっと多くの人を呼んで楽しめる施設に」と、広大な敷地の三段池公園への移転の話が進んだ。

 現在の場所に福知山市動物園としてオープンしたのは1978(昭和53)年5月。フラミンゴやダチョウ、キジなども加わり、市内外の人が訪れた。ニホンザルのサル舎は兵庫県美方郡で捕獲されたサルを譲り受けて整備されたもので、今も当時と変わらず観覧は無料となっている。

「みわ」と「ウリ坊」で一躍有名に

「みわ」と「ウリ坊」で一躍有名に

 福知山市動物園が一躍有名になった出来事があったのは2010年のこと。子ザルの「みわ」とイノシシの子「ウリ坊」だ。親を事故でなくしたみわが同い年のウリ坊にまたがる姿が人気を呼び、国内外のメディアによる取材が殺到した。その愛らしい姿を新聞や雑誌、テレビで見た全国の人たちが地方の小さな動物園に押し寄せた。

 2010年度の来園者数は例年より13万人も多い19万人を記録した。11月3日の文化の日には1日で4700人も訪れたという。高速道路でやってきた来園者で国道は渋滞し、園に苦情も寄せられた。「韓国のテレビ局も取材にきていた。手伝いに来てもらっても人手が足らず、とにかく大騒動だった」(二本松園長)

その後もスター続々

その後もスター続々

 その後も園の「スター」は、代わる代わる誕生していく。テレビ番組「天才!志村どうぶつ園」で、女優の瀧本美織さんが世話をしたシロテテナガザルの「桃太郎」や、2014年のリニューアルとともにやってきたレッサーパンダだ。

 そのほか、カピバラやオオカンガルー、フラミンゴ、フンボルトペンギンなどの人気の動物から希少なワオキツネザルなども園で暮らしている。重なり合って甲羅干しをするたくさんのミドリガメや、池を悠々と泳ぐ立派なニシキゴイも子どもたちに人気だ。

今のアイドルはオウムの「ピーちゃん」

今のアイドルはオウムの「ピーちゃん」

 今のアイドルはオウムの「ピーちゃん」。2019年、園で飼育する動物の人気ナンバー1を決める動物総選挙で第1位に選ばれた。
 
 おしゃべり上手なうえ芸達者で、来園者に「おはよう」や「バイバイ」とあいさつするほか、「バンザイ」と声をかけると、羽を広げて「バンザイ」と返すこともある。

「日常にない楽しい空間を」

「日常にない楽しい空間を」
「日常にない楽しい空間を満喫してほしい」と話す二本松園長

 和やかな雰囲気の小さな動物園は、コロナ禍でも笑顔の家族連れが絶えない。

 二本松園長は「一般的な動物園とは違い、心持ち脱線気味の動物園だが、『楽しかった』と言ってくれる来園者と地域の方に支えられており、大変感謝しています。これからも日常にない楽しい空間を満喫してほしい」と話している。
 
 入園料は大人220円、4歳~中学生が110円。開園時間は午前9時~午後5時。休園日は毎週水曜(祝日と重なる場合は翌日)と12月28日~1月1日。

三段池公園にある植物園

 福知山市動物園がある三段池公園は動物園以外にも植物園や児童科学館、遊具を備えた公園、散策路などがあり、家族で一日楽しめる。サクラやツツジの名所としても知られ、春レジャーを満喫してみてはいかがだろうか。

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