酢造りは酒蔵から始まる。杜氏が泊り掛けで麹を造り醸すのは言わば幻の酒。この酒を原料に、この酢蔵で100日ほどかけてお酢が生まれる。
創業は明治26年。「近所の農家から米をわけてもらった初代が酢屋を始めました」と五代目当主、飯尾彰浩さんは話す。棚田で無農薬米を栽培し、自社の酒蔵で杜氏が酢もとと醪を仕込む。古式の「静置発酵」というやり方で、80縲鰀120日発酵させ、その後300日じっくりと熟成させる。昔ながらの頑なやり方で手間ひまをかけ、ようやく出来上がった一本の酢は、旨味成分のアミノ酸が多く、驚くほどまろやかで柔らかな口あたりだ。「日本一の酢を作りたい」との想いから命名されたという富士酢。日本海に面したこの丹後の地で、日本一の酢が作られている。手のすいた時期なら、蔵の見学も可能とのこと。和の源流を体感する場として、立ち寄ってみたい。
1.富士酢プレミアムは、さらに原料と製法にこだわりぬいた逸品。2.トレードマークの富士山をのれんに。3.五代目当主、飯尾彰浩さん。4.路地を行くと飯尾醸造。古きよき漁村の風景が今もある。